会社の顧問の組織図での位置【結論】

Q. 組織図のどこに顧問を配置する?

A. 法律上の決まりはなく、次の3パターンがよく使われます。

  • ①「代表取締役の横」 — 中小企業で使いやすいパターン。経営トップへの直接助言を表現
  • ②「取締役会の横・点線接続」 — 取締役会に意見を述べるが決議権がないことを点線で示す
  • ③「代表取締役の上・最上段」 — 相談役・特別顧問・創業者などベテラン顧問に多い

Q. 取締役会に入れる?

A. 入れない。顧問は会社法上の役員ではないため、取締役会の枠外に配置します。助言機能を表現するため点線・破線で接続するのが慣例です。

Q. 企業規模別のパターンは?

A. スタートアップ=代表の横、中小企業=経営会議の横、大企業=社外取締役と並列配置。下図3パターンで詳細を解説します。

【図解①】代表取締役の横に配置するパターン

中小企業〜中堅企業で使いやすいパターン。社長の右腕として、日常的な経営判断を助言する立ち位置を表現します。

株主総会 取締役会 代表取締役 顧問 営業部 管理部 製造部
代表取締役と点線で接続される顧問。決議権はないが、代表への助言ラインを明示

このパターンが向く企業

  • 社長が経営判断の大半を担う中小企業
  • 社長が経営全般を一人で担っており、伴走者が必要
  • 経営顧問(戦略・組織・財務全般)を起用するケース

【図解②】取締役会の横に点線接続するパターン

中堅〜大企業で使われるパターン。取締役会の外部助言者としての立ち位置を示し、ガバナンス文書にも載せやすい配置です。

株主総会 取締役会 顧問 (助言) 社外取締役 (監督) 代表取締役 経営企画部 事業本部 管理本部
社外取締役(実線=監督責任あり)と顧問(点線=助言のみ)の違いを色分けで明示

このパターンが向く企業

  • 上場企業・上場準備企業
  • 社外取締役と顧問を併用し、ガバナンスを強化したい企業
  • コーポレートガバナンス報告書を作成している企業

【図解③】相談役・特別顧問として最上段に配置するパターン

創業者・OB役員が退任後に相談役・特別顧問になるケースで使われます。名誉的な立ち位置を組織図上部に表現することで、長年の功労を示します。

相談役・特別顧問 株主総会 取締役会 代表取締役 技術顧問 事業部A 事業部B 管理部
相談役は最上段・点線で名誉的地位を示し、技術顧問など実務顧問は代表取締役の横

このパターンが向く企業

  • 創業者が会長・社長を退き、後進に譲った老舗企業
  • OB役員を顧問・相談役として処遇したい企業
  • 名誉顧問・特別顧問など象徴的役割を担わせたい場合

組織図における顧問の位置を正しく理解する

顧問を雇ったはいいが、「組織図のどこに顧問を配置すればよいのか?」「取締役会との関係はどう表せばよいのか?」と悩む経営者は少なくありません。

結論から言うと、顧問の組織図上の位置に法律的な定めはなく、企業が自由に決められます。ただし、実務慣行・ガバナンスの観点・ステークホルダーへの見せ方から、業界で一般的なパターンが存在します。

本記事では、顧問の種類別に組織図での配置パターンを解説し、中小企業・スタートアップから上場企業まで実例を交えながら紹介します。

組織図の基本:役員と顧問の違い

組織図に描かれる「実線」と「破線」の意味

組織図では通常、実線(━)は指揮命令関係を、破線(‐‐‐)は助言・協力関係を示します。

  • 実線:上位者から下位者への指揮命令・監督関係(例:社長→部長→課長)
  • 破線:実質的な指揮命令はないが、業務上の連携・助言関係がある(例:顧問→社長、スタッフ部門→ライン部門)

顧問は会社法上の役員ではなく、指揮命令系統に入りません。そのため、顧問と経営陣の関係は「破線」で表すことが原則です。

組織図に登場する主な役職と顧問の違い

役職 法的根拠 組織図上の位置 指揮命令系統
取締役会 会社法 最上位(株主総会の下) 入る
代表取締役(社長) 会社法 取締役会の下 入る
監査役 会社法 取締役会と並列(独立機関) 入らない(監査機関)
顧問 なし(契約ベース) 社長または取締役会の横(破線) 入らない(助言のみ)
相談役 なし(契約ベース) 最上部または独立した位置 入らない(助言のみ)

顧問の組織図配置パターン【3種類】

パターン1:社長直属型(最も一般的)

経営顧問の最も一般的な配置パターンです。社長の横に「経営顧問」のボックスを置き、社長と破線(点線)で繋ぎます。

特徴:

  • 顧問が社長に直接助言を行う関係を視覚的に示せる
  • 部門・事業部を跨いだ全社的な視点でアドバイスする際に適切
  • スタートアップ・中小企業でよく使われる

組織図のイメージ:

株主総会
↓
取締役会 (監査役)
↓
代表取締役社長 ‐‐‐‐‐ 経営顧問
↓
各事業部・部門

パターン2:諮問委員会型(大企業・上場企業向け)

複数の顧問・専門家を「諮問委員会」または「アドバイザリーボード」として独立した機関として設置し、取締役会に助言を行う形式です。

特徴:

  • 複数の顧問の役割・権限を明確に分離できる
  • コーポレートガバナンスの観点から透明性が高い
  • 上場企業・グローバル企業・スタートアップでも使われる形式
  • 「指名委員会」「報酬委員会」などの任意諮問委員会と似た位置づけ

組織図のイメージ:

取締役会 ‐‐‐‐‐ アドバイザリーボード
(経営顧問・技術顧問・法務顧問)

パターン3:部門別専門顧問型(技術・法務・財務)

弁護士顧問・技術顧問・財務顧問のように、特定部門に紐づいた専門顧問を当該部門の横に配置するパターンです。

特徴:

  • 顧問の役割・関与部門が明確になる
  • 顧問ごとに責任範囲がわかりやすい
  • 専門性の高い顧問(弁護士・特許事務所など)でよく使われる

組織図のイメージ:

社長
↓
法務部 ‐‐‐ 顧問弁護士
(○○法律事務所)
技術部・R&D ‐‐‐ 技術顧問
(○○博士)
財務部 ‐‐‐ 財務顧問
(○○公認会計士)

取締役会と顧問の関係

顧問は取締役会の「外」に位置する

会社法上、取締役会は株主総会で選任された取締役全員で構成され、会社の業務執行の決定や取締役の職務執行の監督を行う機関です(会社法第329条・第362条)。株式会社の最高意思決定機関は株主総会です。顧問は取締役会の構成員ではないため、法律上は取締役会の「外」に位置します。

具体的には:

  • 取締役会の決議に参加できない(議決権なし)
  • 取締役会の招集権限がない
  • 取締役会への出席権限がない(オブザーバーとして招待される場合はある)
  • 取締役会の決定事項に拘束力を持たせることができない

経営顧問が取締役会に関与するケース

実務上、経営顧問が取締役会と関わるパターンには以下があります:

  • オブザーバー参加:取締役会に出席し発言のみ(議決権なし)。特定の議題に専門知識を提供する目的で招待されることがある
  • 取締役会後の経営会議:取締役会の後に開かれる経営会議に顧問が参加するケース
  • 報告書・資料提供:顧問が取締役会向けに経営分析レポートを提出するケース
  • 諮問委員会経由:アドバイザリーボードとして取締役会に助言書を提出するケース

注意:顧問の「みなし役員」問題

顧問が実質的に経営に深く関与している場合、税法上の「みなし役員」に認定されるリスクがあります(法人税法第2条第15号、法人税法施行令第7条第1号:使用人以外の者でその法人の経営に従事しているもの)。

判断の材料になりやすい実態の例:

  • 法人の経営に実質的に参加している(業務執行を行っている)
  • 取締役会に定期的に参加し、経営判断に関与している
  • 会社への出勤・業務指示など、雇用に近い実態がある

みなし役員と認定されると報酬が「役員給与」として扱われ、法人税法第34条の損金算入の制限(定期同額給与・事前確定届出給与などに当たらない部分は損金にならない)を受けます。組織図上で顧問の位置を明確にするとともに、契約書で役割と関与範囲を文書化しておくことが重要です。

顧問の種類別:組織図での配置の実例

経営顧問の場合

経営顧問は社長に最も近い位置に配置されます。一般的に社長の横(左右)に破線で繋ぐ方式が採用されます。

  • 会社パンフレット・ホームページの会社概要に「経営顧問 ○○ 氏」と個人名で記載
  • 経歴・実績を顧問紹介ページに掲載することで信頼性を高める
  • スタートアップではLPや採用ページの「チーム」セクションに顧問を掲載する例もある

弁護士顧問・法律顧問の場合

弁護士顧問(顧問弁護士)は法律事務所名・弁護士名を表記し、法務部または社長の横に配置します。

  • 組織図表記例:「顧問弁護士 ○○法律事務所 弁護士 山田太郎」
  • 名刺・会社案内・封筒の裏面などに掲載されることもある
  • 顧問弁護士の存在を対外的に示すことで、契約交渉・取引先との関係で有利になるケースがある

技術顧問の場合

技術顧問はR&D(研究開発)部門または技術部の横に配置されます。

  • 組織図表記例:「技術顧問 ○○大学教授 △△ 博士」
  • 特許申請・研究開発支援など特定の技術領域に限定した関与を示す
  • 製造業・医療・IT・バイオ系の企業が、大学教員などを技術顧問に招く例がある

著名人顧問(経営者・元役員・インフルエンサー)の場合

著名人が顧問に就任する場合、組織図よりもホームページ・採用ページ・プレスリリースでの露出が重視されます。

  • 「顧問一覧」や「チーム紹介」ページに写真・プロフィールを掲載
  • プレスリリースで顧問就任を発表し、メディア露出を狙う
  • SNSで顧問就任の紹介・相互告知を行う

著名人の顧問制度については顧問制度を始めた著名人15選の記事も参考にしてください。

企業規模別:組織図の実例

スタートアップ・中小企業の場合

スタートアップや中小企業では、組織がフラットなため顧問の関与が深くなりやすいです。

よくある構成:

  • 経営顧問:社長の横に配置。定例のミーティングで経営全般をサポート
  • 技術顧問:CTOが不在の場合、技術顧問がCTO的な役割を担うケースも
  • 弁護士顧問:顧問弁護士として法務全般をカバー

スタートアップでは、資金調達経験のある経営者やVC出身者を顧問に迎え、投資家との交渉に備える使い方もあります。

中堅・上場企業の場合

中堅・上場企業では、ガバナンスの観点から顧問の位置づけを明確にすることが求められます。

  • アドバイザリーボード(諮問委員会):複数の外部専門家をまとめた機関として設置
  • 社外取締役との関係整理:社外取締役と顧問の役割を明確に分け、ガバナンス報告書に記載
  • 相談役・顧問の状況の開示:コーポレート・ガバナンス報告書の「代表取締役社長等を退任した者の状況」欄に記載(任意)

2018年1月から、上場企業が東京証券取引所に出す「コーポレート・ガバナンスに関する報告書」に、代表取締役社長等を退任した人が相談役・顧問などに就いている場合の氏名・役職・業務内容・勤務形態などを書く欄ができました(記載は任意。名古屋証券取引所「相談役・顧問等の開示に関するご質問と回答」2017年8月2日)。組織図に相談役・顧問を載せる場合は、この開示内容と食い違わないようにそろえておくと安心です。

グローバル企業(外資系含む)の場合

グローバル企業では「Advisory Board(アドバイザリーボード)」という形式が一般的で、組織図上では取締役会に対して独立した諮問機関として配置されます。

  • 技術・法務・財務・市場開拓など、分野の違う専門家や業界の経験者で構成
  • 定期的に会合を開き、取締役会や経営陣に助言する
  • 各メンバーの専門性(技術・法務・財務・市場開拓など)を公開

組織図への記載のポイント【実践ガイド】

顧問を組織図に正しく記載する5つのポイント

  1. 破線(点線)で繋ぐ:実線は指揮命令関係を示すため、顧問には必ず破線を使用
  2. 役割・専門領域を明記:「顧問」だけでなく「経営顧問」「法務顧問」「技術顧問」と専門性を示す
  3. 氏名を記載する(著名人・専門家の場合):名前を出すことで信頼性が向上する
  4. 指揮命令系統に入れない:顧問が部門・社員を直接管理する形にしない
  5. 契約書と整合させる:組織図での位置づけが顧問契約書の業務範囲と一致しているか確認する

組織図に顧問を載せるメリット

  • 採用での訴求:どんな専門家が経営を支えているかを応募者に示せる
  • 投資家・銀行への信頼性向上:専門家がサポートしていることを視覚的に示せる
  • 取引先・パートナーへの信頼感:顧問弁護士・顧問税理士がいることで安心感を与える
  • 内部統制・ガバナンスの強化:外部の目が入っていることを明示できる

顧問紹介ページの作成もお勧め

組織図に加えて、ホームページに「顧問紹介」ページを設けることも効果的です。顧問の顔写真・経歴・専門分野・メッセージを掲載することで、会社の信頼性と透明性を高められます。

顧問を探している企業や顧問として活躍したい方は、顧問になるには?の記事もご覧ください。

まとめ

組織図における顧問の位置についてまとめます:

  • 法的なルールはなく、企業が自由に決められる
  • 破線(点線)で繋ぐのが原則:実線は指揮命令関係を示すため顧問には不適切
  • 3つの配置パターン:社長直属型・諮問委員会型・部門別専門顧問型
  • 取締役会の「外」に位置する:議決権なし・指揮命令権なし
  • みなし役員リスクに注意:深く経営に関与すると税法上の役員と認定されるリスクがある
  • 組織図への記載は信頼性を伝える手段になる:採用・融資・取引先対応で、専門家が支えていることを示せる

顧問の役割・責任範囲・報酬については顧問の責任範囲や顧問料金・報酬の相場の記事もあわせてご確認ください。

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本記事の監修

齊木祐介(ASI株式会社 代表取締役)— 顧問制度・経営支援を含む複数事業を統括し、実務で得た知見をもとに本サイトの情報を監修しています(運営:ASI株式会社)。