外部顧問と内部顧問 — まず「何を頼みたいか」で選ぶ

「顧問を入れよう」と決めたとき、次に直面するのが「外部から招くか、社内OBに就任してもらうか」という選択です。

この選択を誤ると、必要な専門知識が得られなかったり、逆に社内の人間関係に摩擦が生じたりします。外部顧問と内部顧問はそもそも「提供する価値」が根本的に異なるため、自社の課題に合った方を選ぶことが不可欠です。

本記事では、外部顧問と内部顧問を10項目で比較し、企業規模別の推奨パターン、費用の考え方、そして上場会社で進んだ「内部顧問(相談役)見直し」の流れまで、2026年10月時点の法令・公表資料にもとづいて解説します。

外部顧問 vs 内部顧問 — 10項目比較表

比較項目 外部顧問 内部顧問
1. 主な就任者 弁護士・税理士・コンサルタント・元上場企業役員 元社長・元会長・退任した経営幹部
2. 最大の強み 専門知識・客観性・外部ネットワーク 社内事情・取引先関係・企業文化への精通
3. 最大のリスク 社内理解に時間がかかる 院政問題(経営への過度な影響力行使)
4. 契約形態 業務委託契約(助言が中心なら準委任契約が多い) 嘱託契約・委任契約(雇用に近い)
5. 報酬の決まり方 個別見積(分野・稼働頻度・関与範囲で決まる) 社内で個別に決定(嘱託の給与や委任の報酬として)
6. 社会保険 会社の社会保険の対象外(業務委託のため) 雇用(嘱託)で加入要件を満たせば対象
7. 源泉徴収 個人の弁護士・税理士・経営コンサルタント等への報酬は10.21%(同じ人への1回の支払が100万円を超える部分は20.42%)。相手が法人の場合は対象となる範囲が異なる 給与として支払う場合は給与所得として源泉徴収
8. 法的責任 契約の範囲で善管注意義務(民法644条・656条)を負い、違反すれば債務不履行責任 取締役でなければ会社法上の役員の責任(会社法423条)は負わない。雇用・委任の契約上の義務は負う
9. 株主総会承認 不要(取締役ではないため) 不要(上場会社は、元社長等の相談役・顧問を東証の報告書に記載できる欄が2018年1月から設けられている)
10. トレンド スタートアップから上場企業まで幅広く使われる 上場会社を中心に見直し・開示が進む(コーポレートガバナンス強化)

外部顧問のメリット・デメリット

メリット5つ

メリット 具体例 最も効果的な場面
1. 高度な専門知識 弁護士はM&Aの法務、税理士は節税対策、技術顧問はアーキテクチャ設計 自社にない専門性が必要なとき
2. 客観的な視点 社内の「当たり前」に疑問を投げかけ、改善の糸口を見つける 経営が停滞しているとき
3. 外部ネットワーク 営業顧問は取引先紹介、経営顧問は投資家との橋渡し 新規事業・販路開拓時
4. コストの柔軟性 必要な期間だけ契約、不要になれば解約可能 プロジェクトベースの課題
5. 複数企業の知見 他社の成功事例・失敗事例を匿名で共有してもらえる 業界のベストプラクティスを知りたいとき

デメリット3つ

デメリット 影響 対策
1. 社内理解に時間がかかる 組織文化・人間関係の把握に一定の期間が必要 オンボーディング資料を事前に準備
2. 情報共有コスト 社内情報を毎回説明する手間が発生 定期報告のフォーマットを決めておく
3. 守秘義務リスク 外部者に機密情報を開示する必要がある NDA(秘密保持契約)を必ず締結

内部顧問のメリット・デメリット

メリット4つ

メリット 具体例 最も効果的な場面
1. 社内事情への精通 組織の力学・過去の経緯・キーパーソンを熟知 社内改革・人事施策の検討
2. 取引先との関係維持 元社長の人脈で重要取引先との関係を継続 事業承継時の顧客離れ防止
3. 即座の助言 オンボーディング不要で初日から助言可能 緊急の経営判断
4. 従業員の安心感 「元社長が見守ってくれている」という心理的安定 経営交代直後の組織安定化

デメリット4つ

デメリット 影響 深刻度
1. 院政問題 退任した社長が実質的に経営を支配し続ける 極めて高い
2. 変革の阻害 「自分が作ったやり方」を変えられたくない心理が改革を妨げる 高い
3. 客観性の欠如 社内バイアスがあり、外部の視点を提供できない 中程度
4. コストの固定化 常勤の場合、給与・社会保険料などが固定費として発生 中程度

コスト比較 — 外部と内部で「何にお金がかかるか」

顧問の報酬は当事者どうしの契約で決まり、全国一律の公式な相場データはありません。金額は分野・稼働頻度・関与範囲で個別に決まるため、ここでは費用の内訳と、固定費になりやすいかどうかを比べます。

費用項目 外部顧問 内部顧問(常勤) 内部顧問(非常勤)
基本報酬 個別見積(月額固定・時間制・スポットなど) 嘱託の給与として社内で決定 勤務日数に応じて社内で決定
社会保険料(会社負担) なし(業務委託のため) 加入要件を満たせば発生(厚生年金の保険料率は18.3%を労使で折半) 勤務日数・時間によって加入の有無が変わる
個室・秘書・社用車 通常は不要 用意する場合は別途費用 通常は不要
交通費・出張費 実費精算か報酬込みかを契約で決める 通勤手当として支給 実費または通勤手当
コスト柔軟性 高い(契約の範囲・期間で調整しやすい) 低い(固定費化しやすい) 中程度

常勤の内部顧問は、報酬だけでなく社会保険料・個室・秘書・社用車などの間接コストが加わる場合があります。外部顧問の見積もりを比べるときは、月あたりの稼働時間・対応範囲(面談・資料確認・紹介など)・成果物・交通費の扱いをそろえてから比べてください。厚生年金の保険料率は厚生年金保険法81条4項で定められています。

企業規模別の推奨パターン

企業規模 推奨 理由 推奨する外部顧問の種類
スタートアップ(〜10名) 外部顧問のみ OB人材不在、専門知識が急務 税務顧問+技術顧問
中小企業(10〜100名) 外部顧問中心 コスト効率重視、専門性確保 税務顧問+法務顧問+経営顧問
中堅企業(100〜500名) 外部顧問+内部顧問(限定的) 事業承継時のみ内部顧問を活用 複数の外部顧問+OB内部顧問(期間限定)
大企業(500名以上) 外部顧問中心(内部顧問は見直しの対象になりやすい) ガバナンス強化の要請 社外取締役+専門分野の外部顧問
上場企業 社外取締役+外部顧問(内部顧問は開示・見直しの対象) コーポレートガバナンス・コード対応 法務・財務・IR・ESGの外部専門家

内部顧問(相談役)見直しの流れ — 上場会社で何が変わったのか

見直しの背景

退任した社長・CEOが相談役・顧問に就くと、現経営陣に不当な影響を与えかねないという指摘を受け、国と東京証券取引所が相談役・顧問の情報開示の仕組みを整えました。開示によって人数・役割・処遇が外から見えるようになり、各社が制度そのものを見直すきっかけになっています。

主な出来事(公表資料で確認できるもの)

時期 出来事 内容
2017年3月 経済産業省「コーポレート・ガバナンス・システムに関する実務指針(CGSガイドライン)」策定 社長・CEO経験者を相談役・顧問に置く場合、人数・役割・処遇等を自主的に外部へ発信する意義があると提言。あわせて「一律に良い・悪いというものではない」と明記
2017年6月 政府「未来投資戦略2017」 退任した社長・CEOが就く相談役・顧問等の氏名・役職・業務内容等を開示する制度を東証で創設する方針
2017年8月2日 東証がコーポレート・ガバナンス報告書の記載要領を改訂 2018年1月1日以後に提出する報告書から、元社長等の相談役・顧問の状況(氏名・役職・業務内容・勤務形態など)を記載できる欄を新設(記載は任意)
2021年3月1日 改正会社法の施行 監査役会設置会社(公開会社かつ大会社)で有価証券報告書を提出する会社に社外取締役の設置を義務づけ(会社法327条の2)
2021年6月 コーポレートガバナンス・コード改訂 プライム市場の会社に独立社外取締役3分の1以上を求める(原則4-8・コンプライ・オア・エクスプレイン)

出典:日本取引所グループ「相談役・顧問等の開示に関する『コーポレート・ガバナンスに関する報告書』記載要領の改訂について」(2017年8月2日、https://www.jpx.co.jp/news/1020/20170802-01.html)、e-Gov法令検索「会社法」第327条の2、日本取引所グループ「改訂コーポレートガバナンス・コードの公表」(2021年6月11日)。いずれも2026年10月24日に確認。

見直しで論点になる3つの点

  • 院政問題の防止:退任した経営者が影響力を持ち続けることを防ぐ
  • 処遇の透明性:人数・役割・報酬を外から見える形にする
  • 責任と権限の一致:意思決定に関与するなら、取締役として責任を負う立場で関与する

事業承継における外部顧問と内部顧問の使い分け

事業承継は、外部顧問と内部顧問をうまく使い分けることが最も重要な場面です。

承継フェーズ 活用すべき顧問 役割 期間
計画策定期 外部顧問(経営コンサルタント) 客観的な承継計画の策定、後継者要件の定義 6ヶ月〜1年
移行期 内部顧問(先代社長)+外部顧問 先代は取引先・社員への引き継ぎ、外部は法務・税務 1〜2年
定着期 外部顧問中心(内部顧問は段階的に退任) 新体制の経営支援、先代の影響力を段階的に縮小 1〜3年
完了期 外部顧問のみ 先代は完全引退、後継者体制の確立 以降継続

最も重要なのは、内部顧問(先代社長)の関与に「期限」を設けることです。「いつまでも顧問」だと院政問題に発展するリスクがあります。

自社に合った選択をするための判断フローチャート

以下の質問に順番に答えることで、外部顧問と内部顧問のどちらが適切か判断できます。

質問 Yesの場合 Noの場合
Q1: 専門分野(法務・税務・技術など)の知識が必要ですか? 外部顧問を推奨 Q2へ
Q2: 社内に退任予定の経営者がいますか? 内部顧問を検討(ただし期限付き) 外部顧問を推奨
Q3: 事業承継の移行期(1〜3年以内)ですか? 内部顧問(先代)+外部顧問の併用 Q4へ
Q4: 経営の客観的な評価が必要ですか? 外部顧問を推奨 必要に応じて選択
Q5: 上場企業またはガバナンス強化が必要ですか? 外部顧問(内部顧問は見直し・開示を検討) コストと必要性で判断

外部顧問と内部顧問の併用パターン — 成功するハイブリッド活用法

外部顧問と内部顧問は二者択一ではなく、状況に応じて併用することで最大の効果を発揮します。

併用パターン 外部顧問の役割 内部顧問の役割 適用場面
専門性+社内調整 法務・税務の専門的助言 社内の意思決定者への橋渡し 大型契約・M&A時
変革+安定化 改革プランの策定・推進 従業員のケア・反発の緩和 組織改革・リストラ時
外部知見+内部実行 業界ベストプラクティスの導入 社内での実行・定着の推進 DX推進・業務改善
新規開拓+既存維持 新規取引先・パートナーの紹介 既存取引先との関係維持 事業承継後の営業戦略

併用時の注意点

  • 報告ラインの明確化:外部顧問と内部顧問の意見が対立した場合、最終判断は現経営者が行う
  • 情報共有のルール:外部顧問に共有してよい情報の範囲を事前に内部顧問と合意する
  • 会議体の設計:外部顧問と内部顧問が同席する会議を月1回程度設け、方針のすり合わせを行う

契約形態の違い — 外部顧問契約と内部顧問嘱託の比較

契約条項 外部顧問(業務委託契約) 内部顧問(嘱託契約)
契約の性質 準委任契約が多い(民法656条で委任の規定を準用) 雇用契約(嘱託)または委任契約
業務範囲 契約書で明確に定義 「経営全般に関する助言」など広範
勤務場所 原則自由(必要時のみ訪問) 社内に出勤(常勤の場合)
専属義務 なし(他社との兼務が一般的) あり(常勤の場合)
解約の容易さ 契約の予告期間に従う(委任はいつでも解除できる=民法651条。従業員を使う会社が個人の顧問に6か月以上委託している場合は、少なくとも30日前の予告が必要=フリーランス法16条) 退任勧告が必要で心理的ハードルが高い
守秘義務 NDA(秘密保持契約)を別途締結 社内規程に基づく(暗黙の場合も多い)
競業避止 契約で別途定める場合あり 一般的には定めない
税務処理 報酬(外注費)として処理 給与として処理

選択ミスに学ぶ — 外部・内部顧問のよくある失敗3パターン

以下は特定の企業の事例ではなく、相談の場でよく挙がる失敗の型を整理したものです。

失敗パターン1:専門知識が必要なのに内部顧問を選んだ

IT化や新規事業など社内に経験のない分野で、退任した役員を内部顧問に任命する。顧問がその分野に詳しくないと、外部ベンダーの提案を評価できず、投資判断の誤りに気付けないことがあります。

教訓:専門分野の知識が求められる局面では、その分野の外部顧問を選ぶこと。

失敗パターン2:内部顧問の任期を決めなかった

先代社長が「相談役」に就いたまま年数が経ち、後継社長の施策より先代の意向が優先される。幹部社員が先代に「お伺い」を立てる文化が固まると、後継社長の求心力が下がります。

教訓:内部顧問には就任時に任期を決め、延長には取締役会の承認を条件とする。

失敗パターン3:外部顧問を「お飾り」にした

著名な人物を外部顧問に迎えたものの、面談は短い電話だけで実質的な助言がない。「名前を使いたい」という目的だけで報酬を払い続ける状態です。

教訓:外部顧問には契約書で稼働時間・対応範囲を明記し、月次で活動報告を受ける。

海外企業との比較 — 社外の助言者は「アドバイザリーボード」の形でも使われる

米国のスタートアップなどでは、社外の経営者・専門家をアドバイザリーボード(Advisory Board)として迎え、取締役とは別に助言を受ける形がよく知られています。一方、日本の上場会社では、元社長等が相談役・顧問として残る場合に、東証のコーポレート・ガバナンス報告書で状況を記載できる仕組みが2018年に設けられました。

海外の開示ルールや役員制度は国・市場・会社ごとに異なります。海外の投資家や海外子会社に顧問制度を説明する場合は、現地の開示ルールを個別に確認し、顧問の役割・権限・報酬の決め方を文書で示せるようにしておくと安心です。

まとめ — 外部顧問を軸に、内部顧問は期限付きで

本記事の要点を整理します。

  • 外部顧問は「専門知識・客観性・外部ネットワーク」、内部顧問は「社内理解・取引先関係」が強み
  • 費用は、外部顧問は個別見積で範囲・期間を調整しやすく、常勤の内部顧問は給与・社会保険料などの固定費になりやすい
  • 中小企業は外部顧問中心がおすすめ。内部顧問は事業承継時の限定的な活用にとどめる
  • 上場会社では、相談役・顧問の開示と見直しが進み、社外取締役+外部顧問の組み合わせが増えている
  • 事業承継では内部顧問に「期限」を設け、段階的に外部顧問中心に移行する
  • 併用する場合は報告ライン・情報共有ルール・会議体の設計を事前に整備する
  • 外部顧問を選ぶ際は稼働時間・対応範囲を契約書に明記し、「名前だけ顧問」を防ぐ
  • 内部顧問を置く場合は就任時に任期を決め、院政を防止する

顧問の種類の全体像は顧問の種類一覧を、顧問と相談役の違いは顧問と相談役の違いを、顧問制度全般は顧問制度とは?を、顧問の法的位置づけは顧問の立場と権限をあわせてご覧ください。

外部顧問を探している企業様へ:まずは無料でご相談ください

「社内OBに頼むか、外部の専門家を入れるか」から一緒に整理し、課題に合いそうな顧問・アドバイザーをご紹介します。相談は無料です。

無料で相談する

ご自身で外部顧問を探したい企業様へ

顧問制度.comに掲載中の顧問を、分野ごとに見比べられます。

顧問一覧を見る

本記事の監修

齊木祐介(ASI株式会社 代表取締役)— 顧問制度・経営支援を含む複数事業を統括し、実務で得た知見をもとに本サイトの情報を監修しています(運営:ASI株式会社)。