1. 顧問活用が注目される背景
最近は、中小企業やスタートアップの間で外部顧問の活用が広がっています。その背景には、経営課題の複雑化・専門人材の採用難・必要な分だけ外部の知見を借りたいという考え方があります。
社員として採用するのが難しい経験を、月額の顧問契約で借りられるからです。料金を公開して顧問先を募る経営者も増えています。公表されている料金の例は顧問制度の料金事例にまとめています。
経営の複雑化と専門知識の必要性
デジタルトランスフォーメーション(DX)・グローバル競争・規制強化・サプライチェーンの見直しなど、経営者が直面する課題は多様化しています。自社内だけですべての専門知識を賄うことは、中小企業では現実的ではありません。
採用市場の厳しさとコスト問題
人手不足は続いています。帝国データバンクの「人手不足に対する企業の動向調査(2026年7月)」では、正社員が不足していると感じる企業は51.3%で、7月として4年連続で5割を超えました(調査期間2026年7月17〜31日、対象 全国2万2,350社)。
出典:帝国データバンク「人手不足に対する企業の動向調査(2026年7月)」(2026年8月17日公表・2026年10月24日確認)
優秀な人材を正社員として採用するには時間も費用もかかり、希望のタイミングで採用できるとは限りません。これに対し、顧問契約であれば必要な期間・頻度だけ契約でき、成果が出なければ契約を見直せる柔軟性もあります。具体的な費用は稼働頻度や専門性によって個別に決まるため、複数の顧問候補に見積もりを取って比べることをおすすめします。
顧問先の声が公開されるようになった
顧問マッチングサービスの普及で、専門家と企業をつなぐハードルが下がりました。また、顧問側の公式サイトやSNSで、顧問先が実名で感想や成果を公開する例も出てきています。
本記事では、まず顧問の公式サイトに実名で載った顧問先の声から、成果につながった実例を紹介します。続いて、課題別の進め方を架空の例で説明し、成果を出す企業の共通点と失敗パターンをまとめます。
2. 公表された成功事例:顧問先が実名で語る成果
ここで紹介するのは、顧問側の公式サイト(林顧問 公式サイト、令和の虎 公式サイト)に、顧問先の会社名・氏名とともに掲載されている声です。成果の数字は顧問先ご本人の発言で、第三者が検証したものではありません。引用元と確認日を各事例に書いています。
事例1:株式会社L-MARK(林顧問)直営2店舗から12店舗展開へ
池谷義彦氏は、TikTokで林顧問を知り、全国展開を目指しながらも「自力だけでは限界を感じていました」と振り返っています。顧問の関わり方については、「毎回『次の一手』を一緒に考え、実行すべき『宿題』も明確に提示してくれる」と書いています。
出典:林顧問 公式サイト「顧問先の声」(2026年10月24日確認)
事例2:EC-Consulting Japan株式会社(林顧問)知名度と組織化
松下直人氏は、事業拡大に向けて自身とサービスの知名度を上げること、会社を大きくするための助言を受けることを目的に顧問を依頼したと書いています。毎月のお茶の場で、仕事の考え方や人との接し方、事業の伸ばし方を壁打ちしてもらい、組織化が進んだとしています。
出典:林顧問 公式サイト「顧問先の声」(2026年10月24日確認)
事例3:株式会社ダブルヘリックス(林顧問)理念の言語化から差別化へ
中谷康晃氏は、効果を強く訴える商材を扱うため、誤解や模倣を招きやすく過当競争に陥りやすいという課題があったと書いています。顧問のもとで最初に取り組んだのが理念の言語化で、自社のストーリーと想定する顧客像を明らかにすることで差別化が見えてきたとしています。
同時に、「林顧問を乗りこなすには、受け手自身の理解力と行動力が不可欠です」とも書いています。
出典:林顧問 公式サイト「顧問先の声」(2026年10月24日確認)
3. 公表された成功事例:実務支援と顧問先どうしのつながり
事例4:向井瑛一郎氏(三原顧問)SNSからHP刷新まで実務で支援
令和の虎 公式サイトの三原顧問のページには、顧問先の向井瑛一郎氏(@eiichiro_mukai)の投稿が「顧問先向井さんの声」として載っています。投稿では「自分にはない視点からたくさんのアドバイスをいただき」「X草案から始まり、YouTube運用、HPリニューアルまで」と書かれています(2025年11月10日の投稿)。
事例5:まちスマ(三原顧問)顧問先どうしの出会いからFC化の検討へ
同じページには、スマホ社長ナカムラ氏(@machisuma117)の投稿も載っています。「三原顧問合宿で出会えた梶山さんが『まちスマ』の事業に興味を持ってくださりフランチャイズ化を視野に愛知まで来てくださいました」と書かれています(2025年12月3日の投稿)。
出典:令和の虎 公式サイト「三原 拓大」/林顧問 公式サイト/令和の虎 公式サイト「松下 直人」(いずれも2026年10月24日確認)
4. 課題別の進め方(架空の例)
例A:営業組織が弱いSaaSスタートアップ × 経営顧問(営業)
想定する会社: 設立数年、プロダクトに強みはあるが、大手企業向けの営業経験者が社内にいない。
求める顧問の経験: 大手企業向け(エンタープライズ)営業の責任者経験
- 大手企業向けの提案書・営業トークの見直し
- 大手企業の稟議・意思決定の流れに合わせたアプローチ設計
- 顧問の人脈による見込み顧客への紹介
- 営業担当者への定期的な同行・研修
成果の測り方(目標の例): 大手企業との商談数、受注件数、年間の経常収益(ARR)。顧問の紹介に頼らず自社だけで商談を進められるようになったかも確かめます。
例B:生産効率が落ちた部品メーカー × 技術顧問(生産管理)
想定する会社: 長い歴史を持つ金属部品メーカー。生産ラインが古い設計のままで、段取り替えや仕掛品の滞留でリードタイムが延びている。
求める顧問の経験: 自動車部品などの量産工場で工場長・生産技術を担った経験
- トヨタ生産方式(TPS)をもとにした現状ラインの分析
- 工程間の仕掛品の見える化と「流れ生産」への移行設計
- 標準作業手順書の整備と多能工化
- 設備投資の優先順位付けと費用対効果の試算
- 品質不良の真因分析(4M分析)と、現場リーダー向けの改善活動研修
成果の測り方(目標の例): リードタイム、時間あたり生産量、不良率、製造原価。顧問契約が終わった後も改善活動が続いているかも見ます。
例C:海外展開をめざす食品メーカー × 海外顧問(ASEAN)
想定する会社: 国内では知られた調味料メーカー。展示会に出ても、現地の規制や流通の違いに対応できず商談がまとまらない。
求める顧問の経験: 商社などでASEAN地域の食品ビジネスを長く担当した経験
- 進出先の食品規制・ハラール認証・ラベル表示要件の整理
- 現地の食品流通業者(ディストリビューター)の選定支援
- 現地バイヤー向け提案資料の英語化・現地化
- 現地視察への同行と商談のサポート
成果の測り方(目標の例): 現地代理店との契約の有無、試験導入の件数、輸出売上が全体に占める割合。
例D:アナログ業務が多い人材紹介会社 × DX顧問
想定する会社: 求職者・求人情報の管理がExcelとメールに分かれ、フォロー連絡の抜け漏れが起きている。何から手をつければよいか分からない。
求める顧問の経験: HR系のシステム開発を統括した経験(CTOなど)
- 業務フローの棚卸しと「ムダ・ムラ・ムリ」の見える化
- クラウドの採用管理システム(ATS)の選定・導入支援
- CRMを使った求職者フォローの自動化設計
- スタッフ向けのデジタルツール研修と、KPIダッシュボードの整備
成果の測り方(目標の例): 1件あたりの事務作業時間、フォロー漏れの件数、成約までの日数。ツールを入れる前に業務フローを整理したかどうかが、つまずきを避ける分かれ目です。
例E:資金調達を控えた小売チェーン × 財務顧問
想定する会社: 店舗を増やしている途中で、CFOが不在。投資家との交渉を社長が一人で担い、月次決算も遅れがち。
求める顧問の経験: ベンチャーキャピタルや事業会社で投資・財務を担った経験
- 財務モデルの作り直し(3か年計画・シナリオ分析)
- 月次KPIの整備と月次決算の早期化
- 投資家向け資料の改訂とデューデリジェンス対応資料の整備
- 顧問の人脈による新規投資家への紹介と、バリュエーション交渉の準備
成果の測り方(目標の例): 月次決算が締まるまでの日数、投資家との面談数、調達の完了と条件。
5. 成功企業の共通点5つ
公表された実例と、顧問側の公式サイトに書かれた注意点を並べると、顧問活用で成果を上げた企業には共通する特徴が見えてきます。
共通点1:課題が明確で、顧問の専門性と一致している
EC-Consulting Japanの松下氏は「知名度を上げる」「会社を大きくする」と目的をはっきりさせて顧問を依頼していました。「なんとなく経営相談したい」ではなく、具体的な課題に対して、その分野を得意とする顧問を選ぶことが出発点です。
共通点2:毎回「次にやること」を決めている
L-MARKの池谷氏は、毎回「次の一手」を一緒に考え、実行すべき「宿題」を明確に示してもらったと書いています。面談のたびにやることを決め、次の面談で進み具合を確かめる。目標と期限がなければ、効果を確かめることも契約更新を判断することもできません。
共通点3:顧問の提案を社内で実行できる体制がある
顧問はあくまで助言者です。ダブルヘリックスの中谷氏が「受け手自身の理解力と行動力が不可欠」と書いているように、アドバイスを受け止めて実行する担当者・チームがいることが成果の前提になります。社内の手が足りない場合は、三原顧問のように実務まで支える顧問を選ぶ方法もあります。
共通点4:顧問の人脈・ネットワークを活用している
知識の提供だけでなく、顧問が持つ人脈や、顧問先どうしの交流を活用している企業があります。三原顧問の合宿で出会った顧問先どうしがフランチャイズ化を話し合った例のように、交流の場から新しい商談が生まれることもあります。
共通点5:成果が出ない可能性も織り込んで長めに付き合う
林顧問の公式サイトは「基本1年間はやめないでほしい」と書く一方で、「顧問先で結果が出てないところは?」に「全然あります」と答えています。短期で成果を求めすぎず、一定期間は続ける前提で、そのうえで目標に近づいているかを定期的に見直す姿勢が大切です。
6. 顧問導入の失敗パターン3つ
成功事例と対照的に、顧問活用が期待した成果に結びつかないケースにも共通するパターンがあります。
失敗パターン1:目的が曖昧なまま顧問を起用する
「何かに詳しそうだから」「有名な人だから」という理由だけで顧問を選ぶと、支援内容が散漫になります。顧問も何を期待されているかわからなければ、的確なアドバイスができません。顧問起用前に「この顧問を通じて6ヶ月以内に何を達成するか」を言語化しておくことが必須です。
失敗パターン2:実行しない・実行できる体制がない
顧問のアドバイスが的確であっても、社内で実行する担当者がいない・意思決定が遅すぎるという理由で成果が出ないケースがあります。特に中小企業では経営者が多くの業務を抱えており、顧問から受けたアドバイスを整理・実行する余力がない場合があります。顧問導入前に、社内の実行体制を整えることが重要です。
失敗パターン3:顧問の専門性と自社の課題がミスマッチ
財務課題を抱えているのにマーケティング顧問を起用する、製造業なのにIT顧問に生産管理を相談するなど、専門分野がずれていると費用対効果が出ません。顧問選定では、その人の実績・専門分野・過去の支援事例を必ず確認し、自社の課題と本当にマッチしているかを慎重に見極めてください。
7. まとめ:成功事例は「実名・出典つき」で確かめる
顧問導入の成果は、顧問の知名度よりも、課題との一致・毎回の宿題・社内の実行力で決まります。公表された実例でも、成果を語る顧問先は「次の一手」を決めて実行し続けていました。
- 事例を見るとき: 会社名・氏名が出ているか、引用元が分かるかを確かめる
- 顧問を選ぶとき: 自社の課題を得意とする顧問か、実務まで支えるかを確かめる
- 契約したら: 目標と測り方を決め、毎回の面談で進み具合を見直す
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本記事の監修
齊木祐介(ASI株式会社 代表取締役)— 顧問制度・経営支援を含む複数事業を統括し、実務で得た知見をもとに本サイトの情報を監修しています(運営:ASI株式会社)。